第55章

雪奈はそれを聞くなり、反射的に眉をひそめた。

初雪アトリエは「フェニックス」シリーズのグランドショー以降、当面どこの会社とも組まないと公言している。いったん腰を据えて、これまで抱えたままだった未完成のデザイン画をきちんと磨き上げるつもりだ、と。

それなのに――いったい誰が、今さら自分を呼ぶ?

「分かった。行こう」

考えたところで答えは出ない。雪奈はさっと立ち上がり、吉田辰哉と連れ立って部屋を出た。

VIPルームの前まで来ると、雪奈は中をうかがい、背筋を伸ばして座る年配の男の姿に、目の奥の驚きを隠せなかった。

一歩踏み込んだ、その瞬間。

物音に気づいた男が、はっとしたように振り返...

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