第62章

小林凌輝は彼女の腕をひったくるように掴むと、有無を言わせず外へ引っ張った。

「何するの? 離して!」

雪奈はぎょっとして、反射的にもがく。

けれど小林凌輝は聞く耳を持たない。

力は異様なほど強かった。腕の傷口が開き、替えたばかりの包帯がみるみる赤く染まっていくのに、本人は気づきもしない。

裸足のまま彼女を非常口まで引きずると、扉を乱暴に押し開け、冷たい壁へ容赦なく押しつけた。

「……っ」

背中をぶつけ、雪奈がくぐもった声を漏らす。

非常階段は薄暗い。非常口のサインだけが、幽かな緑でちらついていた。

小林凌輝は壁と自分の間に雪奈を閉じ込める。血の匂いと怒気を混ぜた熱い息が、彼...

ログインして続きを読む