第22章

トロフィーを抱え、会場を後にして橘家の別荘へ帰ろうとしていた琳の行く手を、一台の黒いロールス・ロイスが遮った。

後部座席の窓がゆっくりと下がり、悠の端正で冷ややかな顔が覗く。

彼は伏し目がちに、車外の琳に向かって言った。

「乗れ。ここは市街地から遠い」

タクシーなど捕まるはずもなく、歩いて帰るなど到底不可能だという暗黙のメッセージだ。

琳は少し考えた。タダで乗れる車を拒むのは馬鹿げている。

そのまま、ロールス・ロイスのドアを開けた。

広々とした後部座席で、琳は無造作に窓辺へ寄りかかった。頭上を吹き抜ける風が、彼女から漂う微かな香りを運んでくる。隣に座る悠は、その清らかな香りに、...

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