第32章

「九条さん、琳という女が『海内』のレシピを持っているなんて、本当に知らなかったんです! ただの冗談だとばかり思っていて、だからあの時は……」

A市第一病院の院長は、ガタガタと震えながら前を見つめていた。病院で見せていた傲慢な態度は見る影もなく、今の彼の目には恐怖しか映っていない。

悠は少し離れたソファに無表情で腰掛け、ハンカチで銀色の拳銃を念入りに磨いていた。

銃口が意図してか偶然か、院長の方を向くたびに、彼は滝のような冷や汗を流す。だが悠は、ただ冷たく言い放った。

「病院に『海内』のレシピを逃がしただけでなく、俺が命じた件もしくじったな」

「琳は、友人を病院に残して治療させること...

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