第178章 立ちはだかる者

プラハ、ヴァーツラフ・ハヴェル・空港。午前四時。

アンナはつばの広い帽子を目深に被り、VIP専用保安検査場へと早足で向かっていた。

胸に抱えたハンドバッグを強く握りしめる。心臓が早鐘を打っている。

鞄の中に隠したハードディスク、そしてあの「誤送信」を装ったメールこそが、彼女の新生活への切符なのだ。

保安検査を抜け、リスボン行きの便にさえ乗れば、もう安全だ。

現地では九条総一郎の手の者が待っているはずだ。

すべては順調だった。

検査も何事もなく通過し、誰の注意を引くこともなかった。

搭乗口が目の前に迫り、張り詰めていたアンナの神経がわずかに緩んだ、その時だった。

グランドスタ...

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