第261章 もう少し近くへ

彼は昏睡状態に陥り、いつものように軽口を叩くこともなく、ただ繰り返し彼女の名前を譫言のように呟いていた。

「立夏……行かないでくれ……」

深い眠りの中にありながらも、その眉間には苦悩が刻み込まれ、片手が虚空を力なく彷徨う。

葉山立夏がその手を握りしめると、熱を帯びた掌がすかさず彼女の手を強く握り返した。

「もう行かないわ」彼女は静かに、しかし確かな決意を込めて囁いた。「西園寺京夜。私はもう、どこへも行かない」

密閉された空間で、ただ時間だけが過ぎていく。

外で鳴り響いていた銃声はすでに止み、代わりに重苦しい静寂が周囲を支配していた。

西園寺京夜の高熱は一向に引く気配がなく、時折...

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