第267章 危険すぎる

あの日、立ち去る間際に少年は一度だけ振り返って彼女を見た。

その時、一陣の風が吹き抜け、彼女の傘の縁がモクレンの枝に触れ、一枚の花びらがふわりと彼の肩に舞い落ちたのだ。

彼女にとって、それは人生のほんの些細な挿話に過ぎず、その少年の顔などとうの昔に忘れてしまっていた。

だが、彼は違った。ずっと覚えていて、その花びらを何年もの間、大切に保管していたのだ。

葉山立夏は顔を上げ、目の前の男を呆然と見つめた。

西園寺京夜。

かつて「俺たちは互いに利用し合うだけの関係だ」と冷たく言い放った男。

彼女の目の前で、母の遺品を冷酷に打ち砕いた男。

そうか。最初から最後まで、彼が待ち続けていた...

ログインして続きを読む