第81章 恨みは気力を消耗しすぎる

西園寺京夜は、苛立ち紛れにネクタイを緩めた。

この街を闇雲に彷徨っているというのに、彼女の影すら掴むことができない。まるで出口のない迷路に迷い込んだかのようだ。

一方、王立大学病院の無菌室には、どこか呑気な空気が漂っていた。

「聞いた? 街中の探偵の報酬相場が三倍に跳ね上がって、市場は大混乱らしいわよ。タブロイド紙の記者なんて、どこぞの中東の王族が逃げた妃を連れ戻しに来たのかって勘ぐってるくらい」

橘カオリは林檎を剥きながら、揶揄するような口調で言った。

「しかも莫大な懸賞金付き。三十歳以下、黒髪、金融の知識があって中華料理が作れる女の情報さえあれば、クリスタル・パレスのマンション...

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