第82章 彼は彼女に会いたい

橘カオリは呆然と彼女を見つめた。その澄んだ瞳の奥にある、すべてを見透かしたような冷徹な光を。

どうやら葉山立夏は、本当にあの感情を根こそぎ引き抜いてしまったようだ。血肉もろとも、欠片も残さずに。

「あの人の話はもういいわ。ウェーバー教授が言ってたの。次のクールで新しい分子標的薬を試せるって。副作用は強いけど、効果は期待できるかもしれないって。私、試してみたい」

唐突な話題転換だったが、それゆえに彼女の態度は明確だった。

彼女の世界には、もう癌細胞と治療法、そして生き延びるという目標しか存在しないのだ。

橘カオリは目頭が熱くなるのを感じ、喉まで出かかった憤りをぐっと飲み込んだ。そして...

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