第86章 私のことに手を出すな

西園寺ホールディングス本社ビル、最上階のオフィス。

ノックの音が響き、秘書が入ってきた。表情はいつも通り沈着だが、目には複雑な光が宿っている。

「西園寺社長、奥様のフライトは三十分後の離陸となっております」

秘書はまず既成事実を報告し、すぐに言葉を継いだ。

「ですが、あの方があの飛行機に乗ることはありません」

西園寺京夜は顔を上げ、氷のような冷徹な視線を向けた。

秘書は淡々と続ける。

「我々のスタッフがホテルに到着した際、周奥様が心臓の発作を起こされまして。ホテルの緊急医療チームにより、スイートルーム内の医療観察室へ搬送されました。随行医の診断は『急性ストレス性心筋症』。絶対安...

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