チャプター 4
テッサ視点
混乱と恐怖の渦に飲み込まれそうになりながら、私は凍りついたように立ち尽くしていた。それでもなんとかドアの方へと足を向ける。そこには、面接が行われる部屋へと私を案内するスタッフが待ち構えていた。
こんな無惨な姿の私を、誰が見て「第二段階」に進ませようと思ったのだろう? 今この瞬間、私は言葉では言い表せないほどの屈辱を感じていた。
おそらく、さっきのあの男は私を尋問することに何らかの娯楽を見出しただけなのだろう……。そうでなければ、まったく辻褄が合わない。これ以外に、こんな状況を説明できる理由は見当たらないのだから。
私の顔にはまだ衝撃の色が残っていたが、案内係のスタッフはそんな私を苛立たしげに見やった。彼女たちの態度は皆、あの上司――フェリシティ夫人そっくりだ。
「さっさと歩きなさい! 一日中待ってる暇はないのよ」
女性は嫌悪感を露わにして私に怒鳴りつけ、その声で私は我に返った。私は必死に何度も頷いた。
ふらつき、方向感覚も定まらないまま、私は不気味なほど静まり返った廊下を歩き出した……。
キャンパスの建物の外に出ると、ボロボロになった肌に日差しが残酷なほど強く突き刺さった。これ以上、外の誰かに肌を晒すのが怖くて、私はとっさに腹部を抱きかかえる腕に力を込めた。
素早く周囲を見回したが、ありがたいことに、外も中と同じくらい静かだった。他のクラスの生徒たちは、「審判の日」のために解散させられたのだろうか?
肌を刺すような冷たい風が、露出した脚に吹き付ける。それは先ほどの屈辱を痛烈に思い出させるものだった。さらに、裸足の裏には荒く尖った石の感触が伝わり、私は思わず顔をしかめた。
中庭に人の気配がないか探ったが、担当のスタッフは脇目も振らずに第二校舎へと向かっていく。メインの建物からは数分の距離だ……。
「ぐずぐずしないで! あの方々は待たされるのがお嫌いなのよ!」
刺々しい口調の女性が、肩越しに私に向かってそう吐き捨てる。私は鋭い岩や石を踏むたびに込み上げる悲鳴を押し殺そうと、必死で唇を噛み締めた。
やっとの思いで階段に辿り着き、私は滑らかな地面の感触に安堵のため息をついた。これ以上外を歩かされていたら、足の裏から血が滲み出していただろう……。
彼女の後に続いて中に入り、左手の長い廊下へと導かれる。響くのは、彼女のハイヒールがタイルを叩く不吉なコツコツという音だけだった。
程なくして、私たちは「スタッフ専用回廊」と呼ばれるエリアに差し掛かった。そこは部屋も設備も上等で、快適そうな空間と美しく装飾されたオフィスが並んでいる。
もちろん、ここが「男性たち」の面接場所としてあてがわれているのだろう。それなら納得がいく……。
近づくにつれ、各ドアの外に整列している無表情な警備員たちを恐る恐る見上げた。彼らは私の好奇心に満ちた視線を避け、感情を一切排した顔でただ前方を見つめていた。
まったくもって――恐ろしい! 彼ら全員が!
「ジロジロ見ないの、この間抜け!」
再び鋭い命令が飛び、私は瞬時に顔を赤らめた。慌てて視線を落とし、進むべき方向を見失わないよう、彼女のハイヒールの足元だけを注視することにした……。
思考が駆け巡り、不安があらゆる考えを蝕んでいく。こんな状態で、どうやって良い印象を与えろというの? これでは私の時間も、そして男性たちの時間も無駄にするだけだ。
彼がなぜ私にあんなことを求めたのか、それは不可解としか言いようがなかった。
女性のヒールが鳴らすカツカツという無機質な音がようやく止み、私も足を止めた。顔を上げると、彼女がこちらに向き直っているのが見えた。
彼女は侮蔑の色を浮かべた瞳で、私の全身をじろりとねめ回した。そして深いため息をつくと、呆れたように目を逸らす。
「あんたが何でここに呼ばれたのか、私だって知る由もないわ……。そんな格好のあんたに時間を割いてくださるだけでも、ありがたいと思いなさいよ! さっさと入りな。時間は十五分だ、無駄にするんじゃないわよ!」
彼女は退屈そうに目をくるりと回す。その短い言葉の端々に込められた数々の侮辱に、私の心臓がきゅっと締めつけられた。
最悪だ。これでもう、中に入るのが本当に嫌になってしまった……。
私は飾り気のない茶色のドアへと視線を向けた。その向こうに誰が待ち構えているのか、嫌というほど分かっていたからだ!
おずおずと見上げると、そこにはこれまで見たこともないような巨漢の警備員が立っていた(すれ違ってきた他の誰よりもさらに巨大だ)。私は唇を噛みしめ、冷たい金属のハンドルへと手を伸ばした……。
こうなったら、さっさと終わらせてしまおう!
一つ大きく息を吸い込み、冷ややかなドアノブを握りしめて扉を押し開ける。中にはそれなりの広さがある執務室が広がっており、下ろされたブラインドのせいで室内は薄暗かった……。
凍えるような廊下と室内の暖気との著しい温度差に、私は不意を突かれた。待ち受ける相手が誰か分かっているにもかかわらず、晒された肌を温めようと、本能が私を部屋の中へと引き寄せる……。
足を踏み入れると、背後で重々しい音を立ててドアが閉まり、その音が閉ざされた空間に響き渡った。部屋にはシンプルな木製の机と、座り心地の良さそうなソファチェアが二脚。その片方に、先ほど私を尋問したあの緑色の瞳の男が座っていた。
私はドアのそばから動けなかった。彼を少しでも怒らせてしまうのではないかと、極度の不安と緊張でうかつに身動きが取れなかったのだ……。
彼を不快にさせたから、始末するために連れてこられたのだろうか? 騒ぎになるのを避けるために?
しばらくして、ようやく彼が手元の書類から顔を上げた。椅子に深くもたれかかり、その強烈な視線が私を射抜くように捉える。
彼の値踏みするような視線の重圧に、部屋そのものが縮んだかのような錯覚を覚えた。まるで巨大なトラックに押し潰されるような威圧感に、手のひらは汗ばみ、全身の筋肉が強張る。
「座れ」
狼は片手をひらりと振って、向かいの空いた椅子を指し示した。私はごくりと喉を鳴らし、一度だけ頷く。
私は言われるがままに従った。彼に向かって一歩踏み出すたびに、部屋の緊張感が高まっていくのを感じる……。
歩くたびに裸足の下で床板がきしみ、その音が、こんな酷い姿でここにいる恥ずかしさを嫌というほど思い出させた。
「やれやれ……こんなに早く俺と再会するとは思ってもみなかっただろう?」
その怪物は喉の奥でくつくつと笑い、面白そうに舌を鳴らすと、緑色の瞳で再び私を貫いた。
あの忌々しいほど危険な瞳は、それ自体が凶器になり得るんじゃないかしら!
「テッサ、だったか?」
彼の声は抑揚がなく、計算され尽くしていて、何の感情も読み取れない。私の名前が彼の舌の上で転がされると、喉が急に乾いて引きつり、私はただ頷くことしかできなかった……。
もちろん、彼はとっくに私の名前なんて知っているに決まってる……。
「お前の身なりは、ここにいる他の女たちの努力に見合っていない。どういうことか説明してもらおうか」
彼はそう要求し、目を細めた。私は完全に不意を突かれた形だ。
パニックが胸の内に込み上げ、言葉に詰まる……どう説明すればいいの? いじめっ子たちのことや、朝礼のベルが鳴る数秒前にどれほど酷い目に遭わされたかなんて話したら、どれだけ弱虫だと思われるだろうか!
これほど支配的で、強大で、権力を持つ彼のような男にとって……私の言い訳なんて、聞く価値すらないに違いない!
「あ、あの……今朝はあまり……その、身支度に時間をかけられなくて、たぶん? 寝坊して、じ、時間がなかったんです!」
私は口ごもりながら、震えを止めようと両手を太ももの上で固く握りしめ、もじもじと動かした。
「よくもそんな口が利けたものだな……」
彼が次に発したのはそれだけだった。私はハッとして視線を跳ね上げ、彼の厳しい表情と、さらに細められた目を目撃する。
まずい……。
「言ってみろ、テッサ? 俺がどこにでもいるようなクソ馬鹿だとでも思っているのか?!」
彼はわずかに身を乗り出し、まるで子供を叱りつけるように私の名を呼んだ。その声は、恐ろしい恐怖の波となって私の全身を駆け巡った。
最悪! 今度は一体何をして彼を怒らせてしまったの?!
「い、いえ……そんなつもりは……決して!」
私は必死に弁解し、降参するように両手を上げた。彼が私に地獄のような怒りをぶちまけないことを祈りながら。
ここまでの十五分間が、まるで一生続く死刑宣告のように感じられた!
「なら、俺の顔を見て嘘をつくんじゃねえ!」
彼は激昂して怒鳴りつけた。その瞳の色が一層暗くなり、私は反射的に椅子の上で少しのけぞってしまう。
「お、お願いします……ご、ごめんなさい……」
私は魚が陸に上げられたように口をパクパクさせながら、あえぐような声で謝った。まさか私の言い訳で彼がここまでブチ切れるなんて!
どうやら、この状況から逃げ出す道はないようだ……。
彼は一瞬口をつぐみ、苛立ちを隠せない様子で再び背もたれに寄りかかると、不機嫌そうにため息をついた。
「最初から話せ。これ以上俺をイラつかせるなよ!」
彼が吐き捨てるように言う。私は頷き、乱れた呼吸をなんとか整えようとした――今にもこぼれ落ちそうな涙を必死に堪えながら。
「わ、わかりました……本当のことを言うと……審査のベルが鳴るま、前に、ある事件があったんです。こ、こんなことになるなんて思ってもみなかったし、こんな酷い格好になるつもりじゃ……誓って……」
私はどもりながら言った。自分がどれほど乱れた姿をしているか痛いほど自覚していたけれど、真実を認めなければ、ここでゲームオーバーになってしまう。
なぜ彼が私の些細な問題になんて耳を傾ける時間があるのか、私には理解できなかった。
彼は肘掛けにゆったりと腕を乗せ、私の話に真剣に聞き入っているようだった。
「どんな事件だ?」
彼が単刀直入に問い詰め、私は汗ばんだ額を拭う。
私は躊躇した。他の女の子たちとの屈辱的な出来事を詳細に明かすべきかどうか、葛藤する……。
結局、私は曖昧な答えを選ぶことにした。嘘ではないけれど、詳細をすべて話すわけではない。
「そ、そうですね、言ってみればその……ちょっと狙われた、というか」
私は恥ずかしさから視線を落としたまま、肩をすくめた。
「狙われた? なるほど、説明してみろ!」
彼は焦れたように先を促したが、その表情には純粋な興味の光が一瞬きらめいていた。
「そ、その……ダンス教室の女の子たちが……服もメイクも台無しにして、荷物まで窓から放り投げたんです。整列の時間に間に合うのがやっとで……で、でも誓います、今朝はこんなに酷い姿じゃなかったんです!」
恥ずかしさで頬を赤く染めながら、私はそう白状した。
彼は沈黙の中で私を観察し、その言葉を吟味しているようだった。
「で、そもそもなんでお前が目の敵にされたんだ?」
もう質問攻めはやめてほしい……。だが、彼が答えを求めている以上、答えないわけにはいかないことも分かっていた。
理不尽な状況に、私は思わず肩をすくめた。
「分かりません。た、ただ嫌われているだけというか……。でも、今日は最悪でした。これでも精一杯お洒落してきたつもりだったんです……信じてもらえないでしょうけど」
なぜ彼にそこまで話してしまったのか自分でも分からない。だが、一度口を開いてしまった以上、今さら隠し立てしても意味がないだろう。
その狼は哀れみなど見せなかったし、私が傷ついていることなど気にも留めていないようだった。彼が求めているのは、自分の訪問に対して私がなぜこれほど無様な格好をしているのか、その納得のいく説明だけなのだ。
「つまり、今朝部屋を出た時点では、それなりに見られる姿だったと言うんだな?」
彼は急に興味を失ったかのような、退屈そうな様子で問いかけた。
私はこくりと頷いた。うぬぼれていると思われるかもしれないが、彼は嘘をつくなと警告していたし、実際、今朝部屋を出た時の私は自分史上最高だと思っていたのだ……髪もメイクも、本当に気合を入れていたのだから。
「なら、それを証明してみせろ!」
男は断固として言い放ち、私は思わず眉をひそめた。
彼の存在感に圧倒され、息が詰まるようだ。まるで巧妙な心理ゲームで試されているかのような気分になる……。
「え、な、何ですって……?」
私は言葉を詰まらせた。彼の思考回路が全く理解できない。
「お前を三次審査へ進めてやる。だからそこで証明してみせろ。お前が毎日メソメソした惨めな女のようなツラをして生きているわけじゃないってことをな!」
彼はそう結論づけると、きっちりと罵倒の言葉も付け加えることを忘れなかった。私は混乱のあまり、ただパチクリと瞬きをするしかなかった。
一体どういうつもりなのだろう? ただ楽しんでいるだけ? 女が自分の前で狼狽える姿を見て喜んでいるのか? そもそも、なぜ私なんかに時間を割こうとするのだろう?
何もかもが理解不能だ……。
「で、でも、どうしてそんなことを? こんなひ、酷い格好じゃ、二次審査だって通るはずがなかったのに……」
私がそう事実を口にすると、彼は喉の奥で低く笑い声を上げ、私の不意を突いた。
「慈善事業とでも呼んでくれよ、天使ちゃん! 完璧に着飾った他の女たちの群れの中で、お前が目に留まったんだよ……。てっきり、叩き潰して躾ける必要がある、威勢のいい跳ねっ返りかと思ったんだがな。蓋を開けてみれば、ただの怯えた小娘だったわけだ!」
彼は完璧な歯並びを見せつけるようにニヤリと笑い、ただ面白くて仕方がないといった様子で私を見つめた。
私は彼にとってゲームのようなものなのだ……。ただ弄んで暇つぶしをするための道具、ということか。
「さっさと失せろ。家に帰って、せめて人並みに見れるってことを証明してみせるんだな! 7時に迎えに行く!」
彼は顎でドアをしゃくり、容赦のない冷徹な口調で言い放った。私は弾かれたように立ち上がり、時間を割いてくれた礼を口早に述べると、逃げるようにドアの方へと急いだ。
一体全体、私の身に何が起きたというの……。
