第4章:私は新しい社長だ

山田俊樹は今、怒りの頂点に達していた!

この馬鹿野郎、新社長のベンツから降りる道を塞ぐなんて。

死にたいのか?!

「谷本純平、お前何ぐずぐずしてんだ!さっさと来い!」山田俊樹は谷本純平を指差し、怒鳴った。

谷本純平は自転車を停めたばかりで、山田俊樹の怒声に晒された。

福永正志も冷ややかに谷本純平を一瞥し、不機嫌そうに尋ねた。「山田部長、これはお前の社員か?」

山田俊樹は急いで冷笑を浮かべ、「社長、何度かお見えになったことがあるので、紹介が遅れました。こちらは谷本純平、我が社の前社長で、今はただの底辺の配達員です」と言った。

「前社長」という言葉を強調し、嘲笑の色を隠さなかった。

谷本純平、お前もこんな日が来るとは、まさに因果応報だな、ハハハ!

福永正志は顔をしかめ、「雑魚どもを追い出して、新社長を迎えろ」と言った。

そう言いながら、福永正志はスーツを整え、笑顔を浮かべてベンツに向かって歩き出した。

山田俊樹は命令を受け、得意げに谷本純平を指差し、「谷本純平、さっさと荷物をまとめて出て行け」と言った。

谷本純平は白い目を向け、馬鹿を見るような目で山田俊樹を見て、「馬鹿」と一言吐き捨てた。

その「馬鹿」という言葉は、周囲の全員に聞こえ、皆が奇妙な表情を浮かべた。

山田俊樹は即座に怒り、指が谷本純平の鼻先に届くほど近づけ、「くそ!もう一度言ってみろ!」と怒鳴った。

谷本純平は冷笑し、「じゃあ、もう一度言ってやるよ、馬鹿!お前の馬鹿だ!」と言った。

「くそ!谷本純平、お前はもう終わりだ!今すぐ解雇されるだけでなく、会社に経済的損失を賠償しろ!」山田俊樹は歯をむき出しにして叫び、目を見開いて怒りを露わにした。

この谷本純平、全く分かっていない!

彼はもうこの宅配会社の社長ではないのだ。

それなのに、こんなに傲慢でいられるのか?

見ていろ、後でどうしてやるか!

突然!

ベンツのドアが開き、杖をついた老人が降りてきた。顔には怒りの色が浮かんでいた。「誰が彼を解雇するんだ!」

その老人は、笑顔で迎えに来た福永正志を無視して、驚くべき速さで谷本純平の前に歩み寄った。

立ち止まり、腰をかがめ、頭を下げる。

すべてが自然で、敬意に満ちていた。

「若様、遅れて申し訳ありません」老人は恭しく言った。

声は大きくなかったが、針が落ちるほど静かだった。

若様?

多くの人々が驚愕した!

谷本純平が若様になったのか?

どういうことだ?

福永正志はその場に立ち尽くし、笑顔が徐々に固まっていった。

山田俊樹はさらに驚き、口を大きく開けて、「おじいさん、冗談はやめてください。彼は我が社の最底辺の社員ですよ。人違いでは?」と笑った。

木下明彦は冷ややかに彼を一瞥した。

福永正志も眉をひそめ、小走りで近づき、恭しく言った。「木下会長、冗談はやめてください。中でお話ししましょう」

福永正志は企業家だ。

木下明彦のことは知っている。盛田グループの会長だ!

上野市では絶大な影響力を持つ存在だ!

しかし、木下明彦はその場に立ち尽くし、動かず、冷ややかな目で福永正志と山田俊樹を見渡し、不機嫌そうに言った。「誰が冗談を言っているんだ?こちらが新社長だ!」

そんな馬鹿な?

新社長?

山田俊樹は信じられなかった。

「谷本純平、さっさと出て行け。それに、会社に経済的損失を賠償しろ、20万円だ!」山田俊樹は冷笑を浮かべた。

彼は気にしなかった。谷本純平が新社長であるはずがない。

この底辺の姿で。

「山田俊樹、お前はもう解雇されたんだ。出て行け」谷本純平は自転車に寄りかかり、ポケットに手を突っ込み、淡々と言った。

福永正志は木下明彦が嘘をつくはずがないと知っていた。谷本純平が本当に新社長なのだ!

「お前のような無能が俺を解雇するだと?夢でも見てろ!」山田俊樹は笑い、表情が歪んだ。

この谷本純平、馬鹿じゃないのか?こんなことを言うなんて。

木下明彦の顔色は悪くなり、この男が若様を侮辱するとは、死にたいのか!

木下明彦が動く前に、福永正志が山田俊樹の顔を一発叩き、「山田俊樹、今すぐ会社から出て行け。お前は解雇されたんだ!」と怒鳴った。

「社長、どういうことですか?」山田俊樹は顔を押さえ、信じられない表情を浮かべた。

「谷本純平は我が社の新社長だ。彼が解雇と言ったら解雇だ」

その言葉が出ると、全場が驚愕した!

山田俊樹は震え、「そんなはずがない!彼は破産して、貧乏人だ。どうして新社長なんだ?」と叫んだ。

「山田俊樹、お前はもう解雇されたんだ。出て行け」谷本純平は立ち上がり、その言葉が落ちると、山田俊樹は呆然と立ち尽くした。

山田俊樹はその場にひざまずき、谷本純平の足にすがりついて、「社長、申し訳ありません。どうか解雇しないでください。昔の同僚のよしみで、会社に残してください。配達員でも構いません」と懇願した。

谷本純平は彼を蹴り飛ばし、「出て行け!」と言った。

谷本純平は会社の同僚たちを見渡し、「俺が落ちぶれた時に俺を見下していた人が多いのは知っている。でも大丈夫だ。今日から、全員の給料を倍にする!」と言った。

その瞬間、同僚たちの輪が沸き立った!

給料が倍になるなんて!

「社長!」

「社長、愛してます!」

その後、谷本純平は人混みの後ろにいる美しい女性を見つめ、「それから、山田俊樹部長のポジションは竹村琴美さんに任せる」と言った。

一同が振り返り、人混みの後ろに立つ竹村琴美を見た。黒いビジネススーツが完璧な体型を引き立て、薄い黒いストッキングがまっすぐな脚を包み、筋肉が引き締まり、美しいラインを描いていた。

竹村琴美は驚いた表情で谷本純平を見つめ、彼が去るまで信じられなかった。

その時、谷本純平はすでにベンツに乗り込んでいた。

竹村琴美は急いで追いかけ、車の窓の前に立ち、腰をかがめ、大きく白い胸を見せながら、「谷本純平…いや、社長、本当に私を部長にするんですか?」と尋ねた。

谷本純平は竹村琴美の胸を一瞥し、微笑んで言った。「竹村琴美さん、自分を信じていないのか?」

谷本純平が彼女を昇進させたのは、竹村琴美が仕事ができ、体型も良く、美しく、彼に対しても親切だったからだ。

竹村琴美は谷本純平に感謝の気持ちでいっぱいだった。

谷本純平はベンツに乗り込んだ。

ベンツの中で。

「若様、明日、投資プロジェクトがあります。相手の社長に会う必要があります」木下明彦は笑顔で言った。

「行かない」谷本純平は即答した。彼は接待が嫌いだった。

「では、若様、千万円を返してください」木下明彦は淡々と言った。

谷本純平は一瞬驚き、無念そうに「行く、行く、行くよ」と言った。

「分かりました、若様。明日お迎えに参ります」木下明彦は笑顔で言った。

車を降りた途端、谷本純平は疑問の声を聞いた。「谷本純平、ここで何してるの?」

谷本純平は反射的に振り向くと、そこには疑問の表情を浮かべた小宮久美が立っていた。彼女は目を輝かせて彼を見つめていた。

谷本純平は心の中で焦り、小宮久美がベンツから降りてきた自分を見たことで、自分の正体がバレてしまったのではないかと心配した。

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