チャプター 162

キャスパー視点:

午後七時半、俺のマイバッハがホテルの前で停車した。

ネクタイを締め直すと、胸に妙な圧迫感を覚える。

ジェームズが車から降り、手慣れた様子で俺のためにドアを開けたが、その表情はどこかためらうようだった。

「旦那様」俺が車から降り立つと、彼は緊張した面持ちで言った。「本当に、もう一度よくお考え直しにならないのですか?」

俺は眉をひそめた。「何の話だ?」

ジェームズは用心深くあたりを見回してから、身を乗り出してきた。

「夜……ホテル……個室……お互い大人ですから、理解はできますが、もしレインさんがお知りになったら――」

俺が氷のような視線を投げつけると、彼はすぐさま背筋を伸ばした...

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