チャプター 37

キャスパー視点

そっと身を引こうとしたが、彼女の腕はさらに強く抱きしめてくるだけだった。

「くそっ」と俺は息の下で呟き、平静を保とうと深呼吸を試みた。

車に乗っている間ずっと、俺にとっては純粋な拷問だった。

車がカーブを曲がるたびに彼女の体はそっと揺れ、さらに密着するような体勢で俺に寄りかかってくる。

必死に窓の外を流れる景色に集中しようとしたが、彼女の穏やかな寝息と、ほのかに纏う香りが俺の感覚をひたすら襲ってきた。

ようやく車がソーントン邸の門をくぐったとき、俺は安堵のため息を漏らした。

俺は慎重に腰に回された彼女の腕をほどき、素早く車のドアの方へと身を滑らせた。

「旦那様、レーン嬢のこと...

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