第九十二章

キャスパー視点

屋敷の玄関ドアを、俺は重い足取りで押し開けた。気分は、垂れ込める嵐雲のように暗く沈んでいた。

オードリーの拒絶が頭の中でこだまする。思い出される言葉の一つ一つが、すでに重荷を背負った俺の肩に、さらなる重圧となってのしかかってくる。

玄関ホールに入ると、リビングからの話し声が耳に入った。

そこには祖母のドロシーがいて、紅茶から顔を上げ、嬉しそうに驚いた表情を浮かべた。

「キャスパー、思ったより早かったのね」ドロシーはそう言いながら、素早く俺の様子を窺った。

俺の顔を見つめるうちに、彼女の微笑みがわずかに曇る。「どうかしたの? 悩んでいるように見えるわ」

「何でもない」俺はネクタ...

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