第6章
「何が一番腹が立つか教えてあげようか?」舞子は続ける。彼女はもう完全に我を忘れている。「あの偽善者っぷりよ。自分がさも高潔で、道徳的であるかのように振る舞ってるけど、結局は金目当てでここに来ただけじゃない」
「そんなことないわ」恵子が言いかける。
「そんなことあるに決まってるでしょ!」舞子は金切り声を上げた。「あの人を見て! あの安っぽい服と平凡な子供たちを! 家族のためにここに来たと思ってるの? 私たちに金があると知ったから来たのよ!」
怒りがこみ上げてくるのがわかる。だが、先に口を開いたのは翼だった。
「母さんのこと、そんな風に言うなよ」
舞子は彼の方にさっと向き直った。「...
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