第160章

狩野柏斗は、藤原承弦の瞳に宿る執着を見て、わずかに息を止めた。

だが、すぐに思い直す。兄貴は昔からこういう人間だ。

ただ――。

「兄貴、うちの嫁を怖がらせないでくれよ」

半分冗談めかして釘を刺すと、藤原承弦はちらりと彼を見た。

「……本当に、彼女と一緒になったのか」

「もちろん。もう入籍した」

狩野柏斗は眩しい笑みを浮かべ、整った白い歯を見せる。

藤原承弦は、喉に何か詰まったような顔をした。

それ以上は狩野柏斗に構わず、黙って先へ歩き出す。

駐車場に着くと、赤井弦子はいつもの癖で林田朔夜の車のドアを開けようとした。だが次の瞬間、狩野柏斗が彼女の襟元をぐいっと掴んで引き止め...

ログインして続きを読む