第17章

藤原承弦の指が、ぴたりと止まった。

思い返す。

あの頃、彼はヨーロッパで厄介なM&A案件を処理していた。三カ月も滞在し、昼夜も逆転するほど忙しくて――彼女には、ほとんど連絡をしていない。

あの冷たさが、彼女には……捨てられた、と映ったのか?

胸のどこかを、不意にぶつけられたみたいに痛んだ。

つまり彼女は、黙って待っていただけじゃない。置き去りにされた鈍い痛みを、ひとりで噛み砕いていたのか。

自分は彼女の中で……そこまで重かった?

それなのに、なぜ今になって、振り返りもせず去ろうとする。

その矛盾が、心をざわつかせる。脈が跳ねるような落ち着かなさと、言葉にしにくい苛立ち。

―...

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