【第21章】

「……もしもし?」

女の声だった。やわらかく、澄んでいて、寝起きの名残みたいな倦怠が少しだけ滲む。

林田朔夜の言葉は、喉の奥で全部つっかえた。聞き間違えるはずがない。宮本奏夢――。

「どちらさまですか?」宮本奏夢がもう一度たずねる。向こう側に、しゃあしゃあと水音が混じっている。

「……藤原社長に」林田朔夜の声は、紙やすりみたいに乾いていた。

「承弦なら今、シャワー中ですけど。用件、私が伝えましょうか」宮本奏夢は、ごく自然な調子で言う。

林田朔夜はスマホを握りしめ、指先が白くなるほど力を込めた。

浴室の水音。深夜。しかも――婚約者が出る。

もう、分からないはずがなかった。

絶...

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