第36章

藤原承弦が藤原本家を出た頃には、外はもうすっかり暗くなっていた。

車内はしんと静まり返っている。運転手がバックミラー越しにちらりと彼の様子をうかがうが、口を開く勇気はない。

藤原承弦の顔色は、いまにも水滴が落ちてきそうなくらい重かった。

脳裏で、さきほど母に言い渡された言葉がぐるぐる回る。

「奏夢と婚約したんでしょう。だったら早く林田嬢とはきっぱり縁を切りなさい」

「変な記事を書かれたら厄介よ。誰の顔にも泥がつくわ」

縁を切れ、だと?

承弦は鼻で笑った。

自分と林田朔夜のことに、いつから他人が口を挟めるようになった。

彼は視線を落とし、LINEを開いて通知を確認する。

杉...

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