第38章

林田朔夜はスマホを握ったまま、ほんの一秒、固まった。

視線を上げると、藤原承弦がいる。

彼はすでに眉根を寄せ、電話を取ろうと手を伸ばしかけていた。

けれど受話口の向こうで、藤原夫人の声は止まらない。

「林田嬢、おばあさまがね、最近ずっと言ってるの。あなたが煮てくれた、あの粥が飲みたいって」

「今日、時間があるなら顔を出してちょうだい」

林田朔夜の脳裏に、藤原婆さんの顔がふわりと浮かぶ。

銀糸みたいな白髪。笑うと目尻がきゅっと下がって、話すときはいつも彼女の手を引いた。

藤原家で唯一、あんな目で――値踏みするような目で、彼女を見なかった人。

「……分かりました」朔夜は小さく息...

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