第112章 部屋の楽しみ、それだけ

この男は凶悪極まりないが、幸いにも節度はあり、莉緒を疲れ果てさせることはなかった。

一時間後、遥人は彼女の手を見て言った。「あとで指輪をはめておけ」

白くてほっそりした指に何もないのは見栄えが悪い。

莉緒は自分の両手を直視できなかったが、遥人は彼女の指をマッサージしていた。その手つきは的確で確かに疲れを和らげてくれる。

「必要ないわ」もうすぐ離婚するのに、今更指輪なんて。

遥人は機嫌が良さそうだ。「一日でも離婚届を出していない限り、君は既婚者の身分だ」

離婚などありえない。

遥人はそう言わなかった。彼女が騒ぎ出すのを恐れたからだ。

すでに二日も無駄にしている。これからの旅を不愉快なものにはし...

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