第15章 うん、彼は私の夫

加賀信也は車の中から、鈴木莉緒がマンションに入っていくのを見届けてから、森遥人に電話をかけた。

車を走らせて前方のUターン場所へ向かいながら、彼は笑って言った。「あんな綺麗な奥さんを放っておくなんて、お前、男として大丈夫か?」

「何か用か?」森遥人の声には棘があった。

「お前、彼女とは前から知り合いだったのか?」

「いや」

加賀信也は言った。「彼女、お前のこと命の恩人だって言ってたぞ。身を以て恩返しするんだと」

車内でその言葉を聞いた森遥人の頭に浮かんだ考えは一つだけだった。

鈴木莉緒は加賀信也に嘘をついている。

「あいつの言うことを信じるのか?」森遥人は彼を嘲笑った。「お前、...

ログインして続きを読む