第51章 人夫感

白石知世が点滴を受けている。

森遥人は傍らに立ち、まるで古の将軍が想い姫を守るかのように佇んでいた。

鈴木莉緒はその光景を見て、かえって安堵のため息をついた。

森遥人に何かあったわけではないのなら、それでいい。

「鈴木さん」白石知世がこちらを見て、か細い声で呼んだ。

森遥人が振り返る。

鈴木莉緒は何も言わず、笑みも見せず、一瞥すると踵を返して歩き去った。

「遥人さん、鈴木さん、もしかして誤解されたんじゃ……?」

鈴木莉緒が歩き出した途端、白石知世のか弱い声が聞こえてきた。

今の彼女には、白石知世がどれだけぶりっ子だろうと構っている気分ではなかった。確かめたいことを確かめられた...

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