第89章 男は悪い女が好き

ベッドに横たわる鈴木莉緒は、この時少しも慌てていなかった。森遥人と白石知世が二人きりでいても、全く恐れてはいない。

度量が大きいわけではなく、ただ白石知世に現実を思い知らせたかっただけだ。

白石知世がどう足掻こうと、彼女、鈴木莉緒こそが森遥人の妻なのだ。

少なくとも、今は。

盗み聞きしたいという欲求すら湧いてこない。

スマホを手にチックトックを眺め、面白い動画を一つ浅野静香にシェアした。

いくつかの動画をスクロールしたところで、森遥人が入ってきた。

鈴木莉緒は顔を上げ、「もう行ったの?」

「心残りか?」森遥人が問い返す。

「早すぎると思っただけ」鈴木莉緒は起き上がり、笑ってい...

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