第94章 ほんの数時間で、他人になった

森遥人から鈴木莉緒に電話はなかったが、代わりに浅野静香から着信があった。

鈴木莉緒はそれに出た。

「写真の男、誰?」浅野静香は開口一番そう尋ねてきた。「なんであの人の車に乗ってるの? 何もされてないでしょうね」

ゴミを片付けて持ち帰ろうとしている笹川久志に目をやり、鈴木莉緒は答えた。「何かあったら、あなたの電話に出られるわけないでしょ」

「どこで知り合ったの? 一晩中その人と一緒にいたわけ?」

「見覚えなかった?」鈴木莉緒は問い返す。

「え?」

「昨日の夜、私たちが呼んだホストよ」

「……」浅野静香は思わず汚い言葉を口にした。「なんでお持ち帰りしちゃってるのよ? っていうか、森...

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