第117章

「あの時、西田さんの一言があったからこそ、私は迷わずあなたの元へ来ることができたんです」

「実際にお会いして、思い知らされました。私の悩みなんて、本当にちっぽけなものだったんだって。片耳が聞こえないくらいで腐っていた自分が恥ずかしい。あなたはあんな危険な状況から、必死に生き延びてこられたんですから」

 歩美はグラスを掲げ、私を真っ直ぐに見つめた。

「この一杯は、あなたに捧げさせてください」

 私は小さく笑ってグラスを持ち上げ、カチンと軽い音を立てて乾杯した。

 それを飲み干すと、歩美は糸が切れたようにテーブルに突っ伏し、そのまま泥のように眠ってしまった。

 彼女の言葉を聞いていた...

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