第278章

店員に体をほぐされながら、私は頭上の天窓を見上げた。夜の帳が、静かに下りようとしている。

 しばらくして、小林奈菜がふと思い出したように、上村愛美に向かって興味津々な口調で話を振った。

「ねえ愛美。そういえばあんた、旦那との馴れ初めって一度も話してくれたことないよね? やっぱり向こうからのアプローチ? 西田蓮が北村由依を追いかけ回した時みたいに、しつこかったとか」

 私は思わず口を開きかけた。なんでそこで私の話が出てくるのよ、と。

 小林奈菜は喋りながら、ちらりと私の方を見て目配せをした。

 何かを伝えようとしている。

 私はすぐに察した。小林奈菜は単なる好奇心で聞いているわけで...

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