第282章

「どうしたの、帰ってくるなり泣いたりして。外で何か嫌なことでもあった?」

 母は心配そうに私をソファに座らせると、顔を覗き込んできた。

 私は首を横に振る。

「嫌なことなんてないわ。ただ……昨日の夜、悪い夢を見ちゃって。まだあの家にいる夢だったの……」

「あそこはもう私の家じゃないのに。あんなに辛い思いをした場所なのに」

 それを聞いた母の目にも、涙が浮かんだ。

「ただの夢よ。今はもう大丈夫なんだから」

「今のこの生活こそが現実なのよ……今度また怖い夢を見たら、お母さんのところへいらっしゃい。一緒に寝ましょう。いいわね?」

 私は力強く頷いた。

「うん、分かった……」

 ...

ログインして続きを読む