第284章

「私だってよく分からないわよ。マンションの管理会社から電話があって……来てみたら、玄関がペンキまみれだったの」

 母は首を横に振りながら言った。「この家、売りに出すって言ってなかった? どうしていまだに連絡が来るのよ」

 確かに以前、そのつもりではいた。この家の住所は林田翔太に割れているからだ。

 彼がちょくちょく戻ってきては騒ぎを起こすかもしれないし、以前の不法侵入の一件もあった。ここを売ってしまえば、すべてが清算されて静かな生活が戻ると本気で思っていたのだ。

 まさか売却の話が具体的に進む前に、またこんな嫌がらせを受ける羽目になるとは。

 私は頭痛を覚えながら言った。「お母さん...

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