第285章

「僕の影響を受けてほしくないとは、どういうことだ?」

 理久という男の底が、私には見えない。だが、彼が私の目の前に現れたことが吉兆でないことだけは、直感で理解できた。

 文也に関する入札の一件を見れば、それは明らかだ。

 理久は私の夢大を脅しの材料に使い、無理やり従わせようとした。その事実だけで、彼が利益のためなら最低限の倫理観すら持ち合わせていない人間だということがわかる。

 ましてや以前、実花が妹のために奔走していたあの事件の記憶は、まだ生々しく残っているのだ。

 理久は間違いなく自分の妻を死に追いやった男だ。それなのに、今は愛人と堂々と連れ歩いている……。

 あらゆる状況証...

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