第3章

私はベッドにもたれかかり、弱々しく頷いた。「そこに置いておいて。後で飲むから、今は少しめまいがするの」

今となっては、この薬を飲み続けるわけにはいかない。田中奈美が部屋を出て行った隙に捨てるしかない。

しかしその時、部屋のドアが林田翔太によって開けられた。スーツ姿の彼は、実に爽やかで颯爽として見える。

「由依ちゃん、薬は飲んだかい?」

忘れるところだった。毎朝、林田翔太は出勤前に私の部屋へ来て、少し話をしていくのが常だった。

私が口を開くより先に、田中奈美が割り込むように答えた。「まだです。由依様がめまいがするとおっしゃって」

その言葉が出た途端、私は二人が意味ありげに視線を交わすのをはっきりと見た。何か情報を交換しているかのようだ。

この二人、絶対に何かある!

林田翔太は私を咎めるような目で見つめた。「由依ちゃん、薬は時間通りに飲まないと。じゃないと、いつになったら良くなるんだい? ん?」

彼の声は優しく、私に対してこの上ない忍耐強さを示しているかのようだった。

「俺が飲ませてあげるよ」

そう言うと、彼はお椀を手に取り、匙で一さじすくって私の唇元へ運んできた。

私は軽く彼の手を押しやり、恥ずかしそうに装った。「田中奈美さんもいるのに、何するの?」

「翔太、あなたは先に会社へ行って。後で自分で飲むから」

林田翔太は軽く笑った。「田中奈美は身内みたいなものだから、見られても平気だよ」

「それに、由依ちゃんが薬を飲まないと、俺が今日一日、仕事に集中できないじゃないか。早く飲んで、俺を心配させないでくれ」

布団の下で、私は強く手を握りしめた。

以前は、林田翔太が薬を飲むことに関して、これほど執着しているとは思わなかった。

しかし今思えば、毎朝出勤前に、彼は私が薬を飲み干すのを見届けていた。

その理由を考えると、背筋が凍るような思いがした。

私は笑顔を絞り出し、今日の薬をどうやって逃れるか考えていた。

その時、林田翔太の携帯が鳴った。私はすかさずお椀を受け取る。「翔太、電話に出て。自分で飲むから」

彼はそれを見て微笑みながら頷き、窓際に立った。

そして私は、彼が電話をしている隙に田中奈美に言った。「角砂糖を一つ取ってきてちょうだい。口の中が苦いから、薬を飲んだ後に食べるの」

田中奈美は奇妙な表情を浮かべた。「由依様、以前は決してそのようなことは……」

「今、私が食べたくなったらダメなの? 二度も言わせるつもり?」

私は思わず眉をひそめ、強い口調で言った。

田中奈美はそれでようやく部屋を出て、私のために角砂糖を取りに行った。

私もその隙に、お椀一杯の薬をベッドの下にすべて流し捨てた。

ちょうどその時、林田翔太が電話を終えて振り返った。

心臓がめちゃくちゃに跳ね、彼に何か感づかれるのではないかと気が気ではなかった。

幸い、林田翔太は何も気づかなかったようで、ベッドの縁に腰を下ろし、手の甲でそっと私の頬を撫でた。

「さっきのは会社の電話だ。由依ちゃん、早く良くなっておくれよ。そうすれば、君の代わりに会社を管理しなくても済むんだから」

頬に触れる彼の手の甲は温かい。

しかし、私は震えを止めることができなかった。

これは果たして、愛する人の手なのか、それとも人殺しの手なのか!

彼は身を乗り出し、私の額にキスをした。

時を同じくして、田中奈美も角砂糖を持って戻ってきた。その光景を見て、彼女の顔は曇り、目の底には嫉妬の色が満ちていた。

私は田中奈美が持ってきた角砂糖を口に入れ、いつも通り横になった。

林田翔太は私に布団をかけ直した後、部屋を出て行った。

いつもなら、この時間にはもう私は眠っている。だから、彼らはきっと警戒を解くに違いない。

そこで私はすぐに身を起こし、窓辺に歩み寄って階下の様子を窺った。

しかし、何も見えなかった。林田翔太はいつものように田中奈美の手からコートとブリーフケースを受け取り、車に乗り込んだ。

もしかして、私の考えすぎだったのだろうか?

まさか翔太は田中奈美の計画を知らず、彼も彼女に騙されている?

しかし、田中奈美がうちに来てからというもの、私は彼女を姉妹のように思っていたのに、一体なぜこんなことをするのだろう。

先ほどの、私を全身の血の気が引くような思いにさせた彼女の眼差しを思い出し、ふと閃いた。

まさか田中奈美が翔太を好きになって、それで私にこんな手段を?

考えれば考えるほど恐ろしくなり、今すぐにでもこのことを林田翔太に話してしまいたい衝動に駆られた。

しかし、病気になってからというもの、私はほとんど携帯を使わず、一日中この部屋で寝てばかりいた。

もし私が無闇に外へ探しに出れば、また田中奈美に気づかれてしまう。

私はベッドに横になり、真っ暗な天井を見つめながら、ただひたすら耐えるしかなかった。

だが、昨夜もろくに眠れていなかった私は、すぐに強烈な睡魔に抗えず、昏睡状態に陥ってしまった。

目が覚めたのは夕暮れ時で、分厚いカーテンの隙間から夕日の残光が一条差し込んでいた。

その時、部屋のドアが開けられた。私は慌てて目を閉じ、寝たふりをした。

いつものこの時間なら、田中奈美が薬を届けに来る頃だ。

ただ、いつもは彼女に起こされていたから、私が眠っている間に彼女が何をしていたのかは知らなかった。

誰かがゆっくりと私に近づいてくるのを感じた。まるで、怨嗟に満ちた瞳に見つめられているかのようだ。

次の瞬間、田中奈美が口を開いた。「どうしてまだ死なないの? あんたが死ねば、翔太は私のものになるのに」

「なんであんたは生まれた時から選ばれた人間なの? なんで良いことばかりあんたの身に起こるの? なんで翔太はあんたのものなの?」

「死んでよ、さっさと死んでよ!」

その声は悪魔のようで、私は寒気を覚えた。

私は歯を食いしばって耐えた。その時、顔に鋭い痛みが走った。

彼女が何かで私を刺したのだと気づいた。これ以上何かされるのが怖くて、私は目を覚ますふりをした。

「ううん……田中奈美、何時?」

「四時です、由依様」

目を開けると、田中奈美の顔はいつものように平静だった。まるで、先ほどの狂ったような女は彼女ではなかったかのように。

彼女は薬のお椀を私に差し出した。「由依様、お薬の時間です」

朝の口実を使おうと思ったが、なんと彼女はもう片方の手で角砂糖を差し出してきた。「由依様、お砂糖もご用意しております」

今日、この薬を飲み干すのを彼女が見届けるまで、立ち去ることはないだろうと悟った。私は覚悟を決めて薬を飲み、静かに横になるふりをした。

「出て行って。もう少し眠りたいから」

田中奈美が出て行くと、私は素早くベッドから起き上がってトイレに駆け込み、喉に指を突っ込んで薬をすべて吐き出した。

その時、ふと車のクラクションが聞こえた。

慌てて窓際に寄ると、案の定、林田翔太が帰ってきた。

今日起こったことをすべて彼に話そうと準備していたその時、車から降りた林田翔太が、田中奈美の尻を手で軽く揉むのが見えた。

そして田中奈美は、途端に恥じらいに満ちた顔で林田翔太の胸の中に隠れた。

私は雷に打たれたように、目の前の光景を信じられない思いで見つめた。

やはり本当に彼だったのだ。八年も連れ添い、私を宝物のように扱ってくれた夫が、私を殺めようとしていた。

薬に問題があると気づいてから今まで、私はずっと林田翔太を疑いたくなかったし、疑う勇気もなかった。

なぜなら、彼との長年の愛情が偽りだとは信じられなかったからだ。

しかし今、階下の光景が私に重い一撃を与えた。

深い愛情も、演じることができるのだ。

私の顔は紙のように真っ白になり、力を込めてカーテンを掴むことで、ようやくよろめきそうな体を支えた。

階上へ向かう足音が聞こえてきて、私は夢から覚めたように、もがきながらベッドに戻った。

足音は、私の部屋のドアの前で止まった。

林田翔太が尋ねた。「今日の薬は飲んだか?」

田中奈美は軽やかに笑った。「もちろん飲みましたわ。あの馬鹿な女、命の薬か何かとでも思ったのか、一気に飲み干しましたよ」

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