第301章

しばらく言葉を交わすうちに、心に立ち込めていた暗雲が少しずつ晴れていくのを感じた。

だが、ホテルを一歩出た途端、冷たい風が吹きつけ――私は思わずくしゃみをした。

小林奈菜たちとの話を終え、私を送ろうとしていた西田蓮がそれに気づく。彼は迷わずジャケットを脱ぐと、私に差し出した。「着ろ」

短い一言に、思わず笑みがこぼれる。「なによそれ、急に俺様社長みたいな口調になって」

「風邪を引かれたら困る」

彼はジャケットを私の肩にかけ、隙間がないよう丁寧に前を合わせると、「行くぞ。家まで送る」と促した。

時間を確認すると、まだ午後三時を回ったところだ。私は首を横に振り、彼を見上げた。「まだ帰ら...

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