第309章

直也はかぶりを振ると、真剣な眼差しで私に言った。

「ううん、僕、学校のときは平気だよ。毎日楽しいし……」

「でもね、今『毎日楽しい』って言えるのは、ママが楽しそうだからだよ」

 息子のその言葉を聞いた瞬間、目頭がカッと熱くなった。

 子供たちと離れて暮らす時間が長すぎて、私は時折、子供がいるという事実がどれほど尊いことか忘れかけてしまう。

 毎日の親子の触れ合いといっても、仕事から帰って子供部屋を覗くだけ。実際に世話をしているのは、母やおてつだいさんばかりだった。

 ずっと同じ家で暮らしているのに、私と子供たちの間には、目に見えない透明な壁があるような気がしていたのだ。

 この...

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