第31章

窮鼠猫を噛むというが、田中奈美が一体何をしでかすか、見物である。

一方、林田翔太は書斎におり、彼女たちのいざこざなどまるで知らない。いや、たとえ知っていたとしても、気にも留めないだろう。

所詮、彼の目には女など呼べば来て、払えば去る玩物でしかないのだ。彼が最も気にかけるのは、間違いなく自分自身だけだ。

午後、林田翔太が「急用ができた」と言って出かけていった。見るからに慌ただしい様子だった。

林田翔太が去ると、今度は田中奈美が私のところへやって来て、友人に会うため出かけると言う。二人がこうも立て続けに出かけていくのだから、無関係だと信じるのはどこのお人好しか。

しかし私は頷き、行くこ...

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