第321章

いつも私の傍にいてくれる歩美という人は、こういう状況になると、どうしても正面からぶつかろうとする傾向がある。

 だが、私はそれをよしとはしなかった。

 相手が他の人間なら、いっそ叩きのめしてしまえば済む話かもしれない。

 しかし、翔太という男はまるで質の悪い接着剤のように、一度張り付いたら容易には剥がれないのだ。

 今ここで手を出せば、逆に被害者面をされかねないし、警察沙汰になればこちらが不利になるだけだ。

 先に挑発してきたのは向こうだとしても、だ。

 ふと、ある考えが脳裏をよぎった。私はくるりと向き直り、歩美にこっそりと耳打ちをする。

 それを聞いた彼女は瞳を輝かせ、すぐさ...

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