第324章

「そんな、まさか」

 私は慌てて手を振った。

「でも、今日はどうしてまた急に? 事前に電話もなかったから、てっきり最近はお忙しいのかと」

 望はため息をつく。

「実は最近、転職しましてね。自分のことでバタバタしていたんですが、陽菜がどうしても直也くんに会いたいってきかなくて……。それで、ついでと言ってはなんですが、連れてきたんです」

 彼は慌てたように付け加えた。

「前にも来たことがあったから住所は覚えていて……。連絡なしで押しかけてしまって、迷惑じゃなかったかな」

「とんでもない! 来てくれた以上は、大事なお客様ですから」

 これは鎌をかけた言葉だ。望の反応が見たかった。

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