第372章

結婚生活というものは、所詮、当人たちにしか分からない密室の出来事だ。

あのプライドが高く気丈な上村愛美でさえ、この窮状を誰にも相談できずにいたのだから。

私は彼女を励ますことしかできなかった。

「そんなこと言わないで。私たちは親友でしょう? 助け合うのは当たり前よ」

上村愛美は小さく頷き、その瞳に感謝の色が滲んだ。

しばらくして、彼女は私の肩に頭を預けてきた。その声は疲労に塗り潰されている。

「由依……私、もう本当に疲れたわ。この結婚生活にはもう限界。一刻も早く終わらせたい」

「でも、家の事情を考えると、そう簡単に断ち切るわけにもいかなくて……」

私は深く頷いた。

「分かる...

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