第38章

林田翔太は真剣な眼差しで前方を注視し、表情一つ変えずに言った。「由依ちゃん、その携帯、俺がうっかり壊しちゃってさ。

今度、新しいのを買ってあげるよ」

私は軽く眉をひそめ、バックミラーに映る林田翔太の顔を見つめた。

私の携帯は壊れてなんかいない。彼はただ、時間を稼ぐために私に携帯を渡したくないだけだ。

「いいわ。適当なので構わないから」

林田翔太はちらりと私に視線を向けた。「そんなわけにはいかないだろ? 由依ちゃんの持ち物は最高のものじゃなきゃ。由依ちゃん、もう少し待ってて。数日後に新作が発売されたら、それを買ってあげるから」

彼にそこまで言われてしまえば、これ以上食い下がるのは不...

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