第389章

私がいくらそう言っても、母は直也を抱きしめたまま、涙を拭おうともしなかった。

 母は本来、感情を表に出さない人だ。少なくとも私の前では、常に沈着冷静で頼りがいのある、気丈な母親そのものだった。

 父が亡くなってからというもの、母は女手一つで私を育て上げてくれた。私にとんでもない出来事が起きた時も、母とは阿吽の呼吸で通じ合えたし、私の足手まといになることなんて一度もなかった。

 あれほど聡明な母が、今はただの「お祖母ちゃん」として、直也のためにこれほど心を痛めている。

 私は母を見て、小さくため息をついた。

「お母さん、もう泣かないで。お母さんが泣くと、こっちまで申し訳ない気持ちにな...

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