第4章
私は布団の中で震えが止まらなかった。
全身の血の気が引いていく。
まさか……まさか、すべてが真実だったなんて。
本当に、林田翔太が私を陥れようとしていたなんて。
それなのに私は何も知らず、馬鹿みたいにこんな長い間、彼らに騙され続けていた!
まさか、この数年間、私が病気でいる間ずっと、彼らが用意した毒薬を飲まされていたというの!?
そう考えただけで吐き気が込み上げてくる。けれど、胃の中は空っぽで、何も吐き出すことができない。
どうして? この二人は、一体なぜ私をこんな目に遭わせるの?
涙が目尻を伝って静かに流れ落ちた。その時、ふと赤ん坊の泣き声が聞こえた。
私の子供だ。そう、私の子供たちはまだ彼らの手の中にいる。今、泣いている場合じゃない!
二人が私を害する目的が何なのかは分からない。でも、子供たちのために、私は強くならなければ!
私は身を起こし、ベッドのヘッドボードにある呼び出しボタンを押した。
しばらくして田中奈美が入ってきた。私がまだ寝ていないのを見て、その目には驚きが浮かんでいる。
どうして今日はまだ眠っていないのか、と訝しんでいるようだ。
彼女は用心深く私を見つめ、尋ねてきた。「由依さん、どうしてまだ起きていらっしゃるんですか? 何か物音が聞こえましたか?」
それが先ほどの玄関先での、彼女と林田翔太のいちゃつく声のことだと、私には分かっていた。
しかし、私は何も知らないふりをした。「なんだかめまいがして眠れなくて。さっき、何か音がしました?」
田中奈美はしばらく私の顔をじっと見つめていたが、他に変わった表情が見られないことに気づくと、ようやく安心したようだった。
「いえ、何でもありません。先ほど美波ちゃんが少し泣いたものですから、それで由依さんを起こしてしまったのかと」
美波ちゃんは私の末っ子で、双子のうちの妹の方だ。
けれど、私は出産してからというもの、健康状態が急激に悪化し、今では林田翔太と田中奈美というあのクズ男女のせいで、一日中この部屋で眠っているばかりで、子供たちに会う時間もろくにない。
普段、意識がはっきりしている時に子供に会いたいと申し出ても、田中奈美はいつも様々な理由をつけてはぐらかす。
子供が私の休息を妨げるだとか、もう寝てしまっただとか、そんな風に。
普段は直也だけが会いに来てくれるけれど、最近は全寮制の学校に入ってしまったから、週に一度しか会えなくなってしまった。
しかし今になって思うと、ぞっとするような考えが浮かんでくる。
直也は家の近くの学校で何の問題もなくやっていたのに、林田翔太は突然、彼を全寮制の学校へ送ると言い出した。
子供を鍛えるため、などと聞こえはいいけれど、もしかしたら直也ちゃんが成長して、物事の分別がつくようになり、何かを察することを恐れたからではないだろうか?
可哀想な私の直也。家で父と母に甘やかされる年頃なのに、無理やり成長させられ全寮制の学校に送られ、週に一度しか私と会えないなんて。
そう思うと、私の表情は思わず冷たくなった。
あの二人、絶対に許さない。
彼らが私から何を奪おうとしているのかは知らないけれど、会社であれ子供であれ、一つ残らず取り返してみせる!
私は頷いた。「どちらにしても眠れそうにないし、子供たちの様子を見に行くわ」
田中奈美は一瞬、虚を突かれたようだった。「由依さん、お身体が弱いのですから、冷えないようにお気をつけください」
また口実だ。私が子供に会いたいと言うたびに、彼女はいつも口実を探す。
私は眉をひそめた。「ほんの数歩の距離で、何が冷えるっていうの? 母親が自分の子供に会ってもいけないわけ?」
私が強く出たのを見て、田中奈美は慌てて頷いた。「では、お供いたします」
私は田中奈美の腕に支えられ、一歩一歩、怜と美波の部屋へと向かった。
二人を産んでからというもの、この部屋に彼らを見に来ることはほとんどなかった。
見ると、二人の子供はベビーベッドに横たわり、自分の指をしゃぶりながら眠っていた。
この家で何が起こっているのか、まるで気づいていないようだ。
私は二人の子供を見つめ、その額にかかる髪を優しく撫でた。
可哀想な子供たち。生まれてからこの母親の母乳を一口も飲んだことがないなんて、すべて私が悪いのよ!
私が泣いているのに気づき、田中奈美が慌てて尋ねてきた。「由依さん、どうなさいました?」
私は静かに首を振った。「何でもないの。ただ、あの子たちに申し訳なくて。小さい頃からそばで面倒を見てあげられなかったから」
田中奈美はそれでようやく安心したように言った。「大丈夫ですよ。子供たちも大きくなれば、きっとお母様のこと、理解してくれますから」
私は手を伸ばして美波を抱き上げた。彼女は後から生まれた分、兄よりも一回り小さい。
しかし、私が抱き上げた途端、美波は私の腕の中で激しく泣き出した。
目を開けると、彼女は田中奈美に向かって手を伸ばした。「ママ、だっこ!」
田中奈美はバツが悪そうに私を一瞥し、言い訳するように言った。「きっと、小さい頃から私がお世話をしていたものですから、少し勘違いしてしまっているんでしょう。由依さん、お気になさらないでください」
私の心はすでに氷のように冷え切っていた。子供がこの言葉を発するのは決して偶然ではない。きっと誰かが陰で何かを教え込んだのだ。
私は首を振った。「もちろん気にしないわ。でも、この子が将来、実の母親である私を分からなくなっても困るわね。これからは私も時間をとって、この子たちの面倒を見ることにするわ」
田中奈美はきっぱりと断った。「そんな、とんでもないです! お身体の優れない由依さんがお子様の面倒を見るなんて、とてもお疲れになりますよ」
その時、廊下から足音が聞こえてきた。
林田翔太がやって来て、私を見るなり一瞬固まった。「由依ちゃん? 休んでいなかったのかい?」
彼らは私がこの時間には眠っているものと、当然のように思い込んでいたようだ。だから私を見てひどく驚いている。
「めまいがして眠れなくて。子供たちの様子を見に来たの」
林田翔太はすかさず私の肩を抱き、優しい声で言った。「子供のことは田中奈美に任せておけばいい。君の今の役目は、おとなしく身体を治すこと、分かっているだろう?」
再び彼の甘い言葉を聞いても、私の心には冷めた無感覚しか残っていなかった。
以前は、林田翔太が私にこう言うのは本心からだと思っていた。でも今なら分かる。真心なんて、一瞬で変わってしまうものなのだ。
かつては一瞬、彼の言葉が真実だったのかもしれない。でも、今は絶対に偽りだ。
私は頷いた。彼が私に奈美居を打てるなら、私も彼に奈美居を打ってやる。
私は手を伸ばし、林田翔太のネクタイを整えてみせた。「せっかく久しぶりに起きてこられたんだし、一緒に食事でもどうかしら。あなたと食事するのも、ずいぶん久しぶりだもの」
その言葉に、林田翔太と田中奈美の表情がこわばり、それからようやく笑顔で頷いた。
「いいとも。由依ちゃんが一緒に食事してくれるなんて、もちろん嬉しいよ」
私は林田翔太に抱えられるようにして階段を下りた。食卓を見ると、隣り合った二つの席にはすでに食器が並べられ、テーブルの上の料理も一人前には見えない。
林田翔太も田中奈美も、私が食事に下りてくることなど知らなかったはずだ。ならば、この二つの席が誰のために用意されたものかは、火を見るより明らかだった。
私はその席の一つに腰を下ろし、林田翔太が私の隣に座った。
彼は田中奈美にも座るよう促した。「せっかく由依ちゃんも下りてきたんだ。君もこっちで一緒に食べなさい」
まるでわざと私の目の前で、何かを強調しているかのようだ。
田中奈美は私を一瞥し、ためらいがちに口を開いた。「いえ、翔太さん、由依さん。お二人が久しぶりにご一緒にお食事されるのですから、私はお邪魔しません。キッチンでいただきます」
私は彼女を見上げた。口ではそう言っているものの、田中奈美の目はここに残って一緒に食べたいと物語っていた。
林田翔太が引き留めようとした時、私は口を開いた。「田中奈美がそこまで気を遣ってくれているのだから、その気持ちを無駄にするのはやめましょうよ」
