第62章

田中奈美はうちで長年家政婦をしていたのだから、どれが私のコップかくらい、よく知っているはずだ。

彼女は私を殺そうとしている!

私は冷たい視線で彼女を睨みつけ、どんな言い訳をするのか見届けることにした。

一方、田中奈美はひたすら手を振り、ここに来た理由を説明しようと必死だ。

「本当に探し物に来ただけなんです。翔太さん、由依さん、信じてください。決して他意はありません」

私は腕を組み、言い放った。「泥棒に来たのかも分からないじゃない。あるいは私達を恨んで、こっそり毒でも盛りに来たとかね。言っておくけど、田中奈美、あなたはまったく信用に値しない人間よ」

私には話が通じないと悟ったのか、...

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