第64章

 夜、部屋に戻ったとき、ふと気づいた。

 今の私には実家の立ち退きと、上村氏が主催する会食という二つの切り札がある。この機会を借りて、翔太に金の一部を返させよう。

 それからの日々、私は頻繁に外出するようになった。出かける前には必ず、「上村さんと遊びに行ってくる」と口にする。

 翔太が家にいないときは、いっそ一日中帰宅せず、夜になってから鈴木さんに「上村さんと外で遊んでいるから、しばらく帰れない」と翔太に伝言してもらうようにした。

 当然、翔太は私が愛美と親しくなることを望んでおり、文句一つ言わなかった。

 彼が探るように愛美の父が主催する食事会のことを尋ねてくるまでは。

 私は...

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