第68章

 文也の姿を見ていると、思わず彼の代わりに涙が零れ落ちた。

 それなのに文也は、もう帰ってきたんだから泣かないでと私を慰めてくれる。

「もう一つ一番大事なことを話してなかった。翔太に姉がいるのは知ってるか?」

 私は頷いた。「ええ、知ってるわ。林田美玲でしょう? 私の知る限り、翔太はあの姉さんのこと、すごく嫌ってるみたいだけど」

 ところが、文也は首を横に振った。「あんたが見てるのは表面だけだ。翔太は林田家では美玲より立場が下なんじゃないかと俺は疑ってる」

 私は呆然とし、どういうことかと急いで尋ねた。

 文也は言った。「俺がこんな惨めな姿になったのにはもう一つ理由がある。会社を...

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