第79章

私が出てきた時、一家は重苦しい雰囲気に包まれており、誰かが一緒に出てきたことには当然気づかなかった。

ふと振り返ると、江口俊也が私の後ろについてきていた。彼は言った。「松本弘之様が外でお待ちです」

私が頷くと、江口俊也はまた足早に去っていった。

今の彼の身分は西野賢太の助手だ。私と一緒にいるところを見られれば、いらぬ疑いを招きかねない。

会場を出ると、松本弘之の車が目立たないように暗がりに停まっているのが見えた。

私が乗り込むと、松本弘之はすぐに車を発進させた。この辺りは会社の人間ばかりだ、見られたらまずい。

静かな場所に着くと、松本弘之はやっとこちらに向き直った。「さっきの君の...

ログインして続きを読む