第15章 やる勇気があるか

谷口美桜は、山﨑蓮の真っ赤に充血した目を見た。怒りで引きつった顔を見た。――そして、ふいに思った。全部、ばかばかしい。

けれど、山﨑蓮の言った一言だけは正しい。

「離婚? あり得ない!」

だって彼らは、そもそも結婚なんてしていない。恋人関係だって公にしたことはない。美桜がここを出るのは、せいぜい「退職」だ。別れる、ですらない。

彼女は手を振りほどいた。手首に、くっきり赤い輪が残る。

「……じゃあ、これで」

そう言い捨て、きびすを返してキッチンを出た。

山﨑蓮はその場に立ち尽くし、胸が大きく上下する。

追いかけて問い詰めたかった。どうして離婚など口にできるのか、と。

この一生...

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