第16章 私は死ねない

山﨑蓮の顔色は、底冷えするほどに沈んでいた。

「離婚……だと?」

一歩、詰めてくる。長身の影が覆いかぶさり、谷口美桜はすっかり闇に呑まれた。

「谷口美桜、お前は自分を何様だと思ってる。この結婚、いつからお前が終わらせるかどうか決めるようになった?」

青白いのに、目だけは折れない。その強情な表情が、かえって山﨑蓮の神経を逆撫でした。

「また可哀想ぶって、誰に見せてんだよ」

吐き捨てる声は毒そのものだった。

「薬飲んで倒れたフリ、引き継ぎだってわざと引き延ばして……今度は柚奈を唐辛子で傷つけた。そういう手口で俺を騙せると思うな」

谷口美桜は深く息を吸う。この家の空気は、吸うだけで...

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