第208章 私は本当に

谷口美桜は、彼をちらりと一瞥しただけだった。

山本由樹がわざとらしく咳払いする。

「暇なんだよ」

「見てもいいよ」

美桜は歩み寄り、そのまま封筒を差し出した。

「私、料理するから。読み終わったら戻して」

そう言い残してキッチンへ引っ込むと、すぐにジュウッという炒める音が立った。

言いたいことはあった。本当は炒め物なんてしなくていい。

風邪をひいて、今の自分には味なんてほとんど分からないのだから。

けれど――美桜が自分のために作ってくれている。そう思うと口を挟むのが忍びなくて、結局、山本由樹は諦めたように封筒を手に取った。

手紙を読み終え、念のため中も覗く。だが、何も入って...

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