第228章 当時の真相

大野秀島は目を閉じたまま、答えなかった。

だが、その沈黙こそが答えだった。

谷口美桜は、大野直哉の動機について、とうに考えを巡らせていた。

もし大野直樹がずっと政界に残っていたなら、兄は政治を、弟は家の事業を。二人がそれぞれの役割を担い、大野家は着実に力を伸ばしていったはずだ。

美桜は直樹本人のことをよく知らない。けれど周囲の口から語られる彼は、聡明で、家族を大切にする男だった。弟と当主の座を奪い合うような人間ではないだろう。

――だが、直樹が政界を離れるとなれば話は変わる。

大野家の内部に直樹を推す声があり、本人が株を握っていて、さらに医薬バイオ分野で実績を持つ妻までいる。そん...

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