第23章 出張

谷口美桜は翌日には退院できた。けれど不動産仲介から告げられたのは、大家が物件を売ってしまったという事実だった。手付金は返金できるが、入居は不可能。

相手は、月8万の別の部屋を熱心に勧めてきた。だが美桜は首を横に振った。

借りられない。

貯金がまったくないわけじゃない。山﨑グループの高級秘書として給料も悪くないし、普段から節約もしている。けれど、その金の大半は投資に回していた。

――たぶん、先に気づいていたんだと思う。

自分の頭のどこかが、彼女より一歩早く結論を出していた。いつか必ず、山﨑蓮のもとを離れることになる、と。

人波の途切れない街に立ち尽くし、しばらく呆然としてから、結局...

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